塾長のウホっと一言

【岡山県立高校入試】一次希望調査の結果をどう読む?城東・旧五校の動向と「受験の鉄則」

今年も岡山県教育委員会から、県立高校入試に向けた「第1回進路希望調査(一次調査)」の結果が公表されました。

新聞やニュースで「〇〇高校、倍率1.5倍!」といった見出しが躍ると、どうしても家庭内の空気がピリついてしまうものです。特に、旧岡山五校(朝日・操山・芳泉・一宮)や、近年圧倒的な人気を維持している岡山城東高校、あるいは倉敷四校(青陵・天城・南・古城池)を目指すご家庭にとっては、看過できない数字でしょう。

しかし、長年このデータを見続けてきた立場から申し上げますと、**「今の倍率で志望校を変えるのは時期尚早」**です。

ここでは、今回の調査結果を受けての率直な所感と、特に注目すべき**「岡山城東高校」の近年の推移**、そしてこれから本番までに取るべきアクションについて解説します。

1. 所感:今年のトレンドと「高倍率」の正体

まず、全体的な傾向として感じるのは、「安全志向」と「挑戦志向」の二極化です。

人気校への集中は「あこがれ」の表れ

例年通り、都市部の進学校や、就職・進学に有利な実業系高校に人気が集中しています。ここで冷静になるべきなのは、一次調査の段階では**「今の実力では少し足りないけれど、行けたらいいな」という『あこがれ層』が含まれている**ということです。

担任の先生との三者面談前のアンケートベースであることが多く、「とりあえず第一志望を書いておこう」という生徒が相当数います。つまり、現時点での高倍率は、実質的な競争率よりも「かなり膨らんでいる」と見るべきです。

2. 注目!「岡山城東高校」の近年の推移と特徴

ここで、旧五校と並び、あるいはそれ以上の激戦区となっている岡山城東高校について特筆します。 城東高校は、近年**「県内で最も倍率が高い学校の一つ」**として定着しています。

なぜ城東はこれほど人気なのか?

「単位制」によるカリキュラムの柔軟さ、私服通学も可能な自由な校風、そして国際教養や音楽など特色ある学類設定が、現代の生徒のニーズに強くマッチしています。 そのため、一次希望調査では1.6倍~1.8倍近い驚異的な数字が出ることが珍しくありません。

城東志望者が知っておくべき「数字の動き」

近年の推移を見ると、城東高校には以下の傾向があります。

  1. 一次調査(今回)がピーク 例年、この時期が最も高い倍率になります。「さすがに高すぎる」と感じた層が、一宮高校や東商業、あるいは私立専願へと流れるため、最終出願時には数字は下がります。
  2. それでも「高倍率」は維持される 他の高校と違い、城東には「絶対に城東に行きたい(校風に惚れ込んでいる)」という熱烈なファン層が厚いため、他校へ流れる人数が比較的少ない傾向にあります。最終倍率でも1.3倍~1.4倍前後と、県内トップクラスの激戦になることは覚悟が必要です。
  3. 学類ごとの倍率に注意 城東は4つの学類(人文社会・理数・国際教養・音楽)がありますが、入試では第2志望までのスライド合格などの仕組みが関わります。全体の倍率だけでなく、自分の志望する学類の枠がどうなっているかを確認する必要があります。

結論: 城東志望者は、今回の高倍率を見ても「いつものこと」と割り切り、基礎点の底上げに集中するしかありません。

3. 倍率の「変動メカニズム」を知る(旧五校・全体)

一次希望調査から、最終的な「一般入試出願」に至るまで、数字はどのように動くのでしょうか。

① 「魔の倍率」による心理戦

例えば、一宮高校や芳泉高校などで倍率が高く出たとします。すると、「無理だ」と判断した層が、ワンランク安全圏の高校へ志望変更します。

  • 高倍率のA高校から → B高校へ
  • B高校の倍率が上がる → C高校へ

このように玉突き事故のような移動が起き、結果として突出して高かった倍率は、最終出願時には1.2倍前後に落ち着くことが多いのです。(※ただし、岡山朝日は「何が何でも朝日」という層が不動のため、あまり減らない傾向にあります)。

② 私立専願への切り替え

12月~1月の三者面談を経て、私立高校の専願に切り替える生徒が一定数出ます。これにより、公立全体の志願者数は、今回の調査結果よりも必ず減少します。

つまり、**「今の数字が一番高い状態(MAX値)」**だと考えてほぼ間違いありません。

4. 具体的にどう動く?保護者がすべきこと

① 「倍率」ではなく「定員超過数」を見る

「1.5倍」という比率に踊らされてはいけません。見るべきは**「あと何人オーバーしているか」**という実数です。 定員320人で1.1倍ならオーバーは32人ですが、定員160人で1.5倍ならオーバーは80人です。 特に城東や旧五校のような規模の大きい学校では、実数としての「不合格者数」が多くなるため、比率以上に厳しい戦いになることがあります。

② 模試の結果(A/B判定)を信じる

今回の倍率を見て志望校を変えるかどうかの判断基準は、倍率そのものではなく**「本人の持ち点(内申点+模試偏差値)」**です。 もし、お子様がその高校の合格安全圏(A・B判定)にいるなら、たとえ倍率が2倍でも堂々と受験すべきです。倍率が高くても、合格ラインの上位層は変わりません。 逆に、D・E判定で倍率が高い場合は、現実的な「プランB」を冷静に準備する必要があります。

③ 「私立の結果を見てから決める」

岡山県の入試システムでは、2月の私立入試の結果が出揃ってから、3月の県立一般入試の最終出願先を決めることができます。 今、焦って「志望校を下げる」と宣言する必要はありません。「私立で特進・特別コースに受かったら、県立は強気で〇〇高校に挑む」といった戦略を立てておくことが、メンタルの安定につながります。

5. 結論:数字は「過去」の集計、変えられるのは「未来」の点数

今回の一次希望調査の結果を見て、一喜一憂するのは今日までにしましょう。

厳しい言い方になりますが、倍率が1.1倍だろうが1.8倍だろうが、合格点を取れば受かります。 高倍率を見て「逃げたい」と思った時、それが「戦略的撤退」なのか、単なる「自信のなさからの逃避」なのかを見極めることが大切です。

これから入試本番までの数ヶ月、最も成績が伸びる時期です。 周りの騒音(倍率の話)をシャットアウトし、「あと10点伸ばすにはどこを復習すればいいか」に集中できた生徒が、最終的に桜を咲かせます。

保護者の皆様におかれましては、動揺するお子様に対して「倍率高いから無理じゃない?」と言うのではなく、**「この数字は仮のもの。大事なのはあなたが合格点を取れるかどうかだけだよ」**と、どっしり構えてあげてください。

その「親の落ち着き」こそが、受験生にとって最強のお守りになります。

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